がん検診の有効性|前田内科医院|上尾市

がん検診の有効性

がん検診の有効性についてはEBMの手法で(EBMの項もご一読ください)見極める事が出来ます。がん検診が有効なものか、そうでないかを見極めるには「がんの死亡率」が大事な指標になります。日本では「早期発見・早期治療」をモットーにがん検診が推し進められてきたため(その考え自体は間違っていないのですが)、ややもすると早期発見さえできればよい、と誤解を生む原因にもなっていました。

がんにも早期発見が有効ながんとそうでもないがんとがあります。がんが発見できても死亡率が減らなければがんを発見するメリットはないばかりか、逆にがんに対する心理的恐怖感や治療による副作用の点でデメリットにもなり得ます。

死亡率を直接検討するにはランダム化臨床試験(無作為化比較対照試験)で検診を受けた群とそうでない群とを追跡して比較するのが王道ですが、既に広く実施されている多くの検診ではこのような試験は行いにくいのが実情です。そのような場合は他の様々な手法(症例対照研究や間接的な臨床研究)を使って死亡率を検討する試みが行われます。

これまでに明らかになっているがん検診の有効性については国立がん研究センターのホームページに詳しく書かれていますので関心のある方はご覧になって下さい。

簡単にまとめると

(推奨の強さをA, B,・・・で示しています)

(1)胃がん検診(胃X線検診)
死亡率減少の証拠あり 推奨B(ただし胃X線検査の場合)
[胃内視鏡検査、ペプシノゲン法では死亡率減少の証拠なし。推奨しない]
(2)大腸がん検診(便検査)
死亡率減少の証拠あり 推奨A
[大腸内視鏡検査や注腸検査での検診では死亡率減少の証拠なし。推奨しない]
(3)肺がん検診(胸部X線検診)

死亡率減少の証拠あり 推奨B(危険群は喀痰細胞診併用)

(前田注:世界的には日本の胸部X線撮影と同じ方法で死亡率減少の証拠はなく、勧められていません。日本から発表された研究では技能の高い専門機関での検診で死亡率減少が示唆されてはいますがその効果は大きなものではないため、一般の検診で同等の効果が得られるか不明であり、当院では推奨していません。
肺がんに関しては今後CT検査による検診が主流になりそうですが、これにはがん以外の腫瘤が多く見つかってしまうため余分な生検検査が増える(過剰診断)というデメリットもあり結論は出ていません。米国のUSPSTFという国立予防研究所では2013年に低容量CTでの肺がん検診を喫煙者(30pack-year:一箱を30年続ける量に相当)や禁煙して15年未満の55歳から80歳までの方に勧めるというガイドラインを発表しました。しかしまだこれには米国内でも異論があるようです。
(4)子宮頚がん検診
死亡率減少の証拠あり 推奨B
(5)乳がん検診(マンモグラフィー単独法またはマンモグラフィー+視触診法併用法)
死亡率減少の証拠あり 推奨B
(6)前立腺がん検診(PSA検診)
死亡率減少の証拠なし 推奨しない
[前立腺がんの問題点については別項をご覧ください]
(7)これ以外の子宮体部がん検診、卵巣がん検診、等々のがん検診には死亡率減少の証拠のある検診はありません。
結局、現時点で推奨できるがん検診は胃検診(胃X線検診)、大腸がん検診(便検査)、子宮がん検診、乳がん検診(マンモグラフィー検診)の4つのみということになります。
診療内容