アメリカ内科学会(ACP)|前田内科医院|上尾市

米国内科学会(ACP)について

はじめに

欧米の学会の名称にはSocietyとか、Academyとか、Collegeとか、色々な表現がありますが、アメリカ内科学会(本部:フィラデルフィア)はCollegeという言葉を使っていて、American College of Physicians、略してACPと呼ばれています。全米でアメリカ医師会(AMA)の次に大きな医師の集まりです。Collegeという言葉を使う学会は一般に資格試験があったり、一定の要件が充たされて初めて入会が認められる学会と言われています。
アメリカでは卒後研修後にAmerican Board of Internal Medicine(ABIM)の試験に合格して初めて「内科専門医」を名乗ることが出来て、内科学会(ACP)の会員になることが許されるのでCollegeを冠しているのです。イギリスの王立医学会(Royal College of Physicians)を意識したネーミングでもあります。(他にCollegeを冠したアメリカの学会では循環器のACCや消化器のACGなども有名です。)

日本人医師とACP

私は1996年にACP入会を許され、2000年にはフェローという称号の上級会員(FACP)になりました。ACPの年次セッションには1997年以来毎年参加しています。
日本の内科医がどうやってアメリカの内科学会に入れたのか、疑問に思われた方も多いと思います。そのご説明には東京大学名誉教授で東北大地震の際の国会の原子力発電所事故調査委員会委員長を務められた黒川清先生のお話から始めなければなりません。黒川清先生は東京大学卒業後渡米され、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で内科教授を長く務められた後、帰国され母校の東京大学教授、東海大学教授~同大学医学部長、日本学術会議会長を歴任されました。黒川先生はACPからマスター(MACP)という称号を頂いています。先生はアメリカ生活が長かったこともあり、ACP内の理事の先生方と親しい間柄でおられたため、たまたま日本内科学会の理事長を務められた折にACP側と折衝され、日本の内科学会の認定した内科専門医(現在:総合内科専門医)とアメリカのABIMの試験合格者は同じ様に高いレベルを持った内科医であり同等だと言う趣旨の提案をされて、それが認められて日本の内科医にもACP会員になる道が開かれたのです。


黒川清先生と筆者

日本支部設立へ

さて、そのようないきさつで国内のACP会員が認められるようになりましたが、それだけで終わりではありません。ACPには全米各州や海軍等だけでなく、カナダや南米などにも支部(Chapter)があります。実は日本にも日本支部(Japan Chapter)を造ろうと、当初から目論見があったのです。これが実現すればアメリカ大陸以外では初めての支部誕生となります。私も実働部隊の一委員として、ACPの年次セッションの際や2002年に京都で行われた国際内科学会(会頭は黒川清先生で、多くのACP関係者も来日しました)などの際にACPの当時の会長やACP本部の実務担当者とのミーティングに何度か出席し日本支部設立の実現性について協議する光栄に預かりました。

そのような協議を経て、ようやく2003年に日本支部(Japan Chapter)設立が認められたのでした。初代の支部長(Governor)はもちろん黒川先生で、第二代を島根大学元学長・名誉教授の小林祥泰先生、第三代を大船中央病院特別顧問の上野文昭先生が務められました。日本支部に続いて2012年にはサウジ・アラビアにも支部が設立され、ACPは次第にワールドワイドな組織に変貌しつつあります。

ACPの年次セッション

先にACP本部の年次セッション(その年を入れて「Internal Medicine 20xx」と呼ばれています)に1997年以来毎年参加していると書きましたが、この年次セッションの一番の特徴は日本の学会のような研究発表の場ではなく、内科の専門医が知識を更新する場、新しいエビデンスを共有する場となっていることです。3日間の間に250を越えるさまざまな講義が毎朝7時から用意されていて自分で聴きたいセッションを選んで参加できるようになっているのです。その形式も趣向を凝らしたもので、普通の講義もあればキーパッドを使った双方向のセッションもあるなどバラエティーに富んでいます。すべて臨床に直結した話題ばかりですので、私たち開業医にも大いに勉強になることばかりです。アメリカで話題になったトピックが2~3年後に日本でも話題になるという「時間差」もしばしば経験しますので知識の先取りという面でもメリットは大きいです。
また、木曜日の夜には新たにマスター(MACP)やフェロー(FACP)になられた方の認証式(Convocation Ceremony)が行われ、ガウンをまとったニュー・フェローが全米や日本をはじめ海外からも出席して厳かな式も行われます。

さまざまな出会い

年次セッション「Internal Medicine 20xx」では私たち日本人医師にとってもう一つ重要なイベントも行われます。それはConvocation Ceremonyの後に行われる「国際レセプション」と、翌日の夜に毎年日本支部主催で行っている「日本支部レセプション」です。この二つのレセプションを介してアメリカをはじめ、海外の内科医と直接交流できる場が持てます。ACPの元会長、現会長、次期会長、理事会議長、国際内科学会会長など要職にある先生方とも直接お話しできる良い機会でもあります。

最後に

私とACPとの関わりは既に20数年の長きにわたりますが、その間様々な方とお会いし、アメリカの最新のエビデンスに触れ、アメリカ式の医学教育の良さを身をもって体験してきました。これからも出来るだけ良い部分を吸収し、日本支部を通じて日本の医療を良い方向に向けられるよう微力ながら尽くしたいと思っています。

診療内容